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教室に残っていた複数の時計。
それらの針が指し示す時間はどれもばらばらで、
同じリズムで共通の時間を刻んでいると思っていたことは、
もしかすると勘違いだったのかもしれないと思わされた。
チクタクちくたくチクたくチくタく。
前回、伊計島での滞在制作展について触れたが、
その続きを今回は書きたいと思う。
旧伊計小中学校二階にある倉庫だったふたつの空間。
そこが私の展示場所だ。
狭くて打放しコンクリートの室内には窓もなければ電気もない。
ひとつの空間は天井が高くて小さくて、
もう一つの空間にはてらてらと光るアルミテープに巻かれた
大きな配管が壁から飛び出していた。
それがとても印象的だった。
私は、ホームセンターでアルミテープを購入して、
型枠をはずしただけのむき出しのコンクリートに沿って、
アルミテープを貼り始めた。
外気に向けて放熱するコンクリートは固くて冷たい。
けれどその表情は意外に豊かで、
アルミテープの上から指でこすると
凸凹の面やぴったりかっちりした面が現れてくる。
作業中、アルミ面に映り込む自分の手と
その先に続く身体のラインがぼんわり浮かび上がるのを眺めながら、
暗くて小さい空間にも光が届いていることを感じる。
ふと見ると、廊下を挟んで向かい側の教室の窓に備え付けられた
ブラインドの緑が映り込んでいることに気づく。
何もないように思えた倉庫には、光も色も存在していたのだ。
いつの間にか陽が沈む時間になっていた。
陽の光が廊下を渡り伸びやかに暗い部分にたどりつく。
アルミ面がぎらぎらと朱色の光を放っていた。
時間と光と色とが交差する贅沢な時間。
制作の間、私はふたつの空間を行ったり来たりしていたのだが、
片方で制作していると片方はほったらかしの時間になる。
どちらも同じ時間が流れているはずなのに、
ほったらかしの空間に戻るとどうも違う時間の動き方をしているように感じた。
けれど、夕刻の朱色に包まれる時だけは、
どこもかしこも同じ時間を共有しているかのようにひとつだった。
白くて四角い時計。同じふたつの時計が指し示すずれた時間。
それは、それぞれの場所で流れていた感覚的時間の差を象徴しているかのようだった。
会場:
旧伊計小中学校 2F
沖縄県うるま市与那城伊計224(駐車場:校舎前グラウンド)
入場料:無料
出展作家:
石垣克子、児玉桂、児玉美咲、佐藤大地、平良亜弥、西真理
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