2013年6月10日(月)付けの沖縄タイムス「唐獅子」に掲載されました。
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昨年9月、本島(ほんじま)という島にはじめて訪れた。
香川県丸亀市に属する島で、塩飽諸島と呼ばれる島のひとつ。
塩飽水軍の拠点の島だったそうで、江戸時代の政庁跡である塩飽勤番所はじめ、
歴史・文化財が多く残っており、島の北東に位置する笠島地区は、
重要伝統建造物群保全地区にも選定されている。
さて、なぜ私が本島に行ったのかというと、
そこで「瀬戸内国際芸術祭2013」という国際展に友人と出展することになったからだ。
香川に嫁いだ友人の義父が所有する土地が、本島の屋釜地区にある。
その場所は、友人の旦那さんがまだ小さい頃、本島に家族で通った思い出の場所らしい。
義母は本島出身で、その祖父母は現在も島で生活をしている。
子どもたちが小さいときは、よく家族で祖父母に会いに島に訪れたそうだ。
そして、海水浴を楽しみ、義父の所有する土地に
簡易的に建てた別荘で数日宿泊もしていたそうだ。
その後、もう一件、本格的な別荘を建てる計画をしていたが、
子どもたちの成長とともに、島に訪れる機会が減っていき、
基礎造成したところで建設は中断してしまった。
ここ数年は、義父と旦那さんが年に数回、管理のため
土地に除草剤を撒きに島を訪れるだけになっていたそうだ。
思い出の残る土地が管理のためとはいえ、
除草剤がまかれ続けることに疑問を感じ、
作品を通して、緩やかでも何かが変わっていくことを期待して、
作品を制作することを決めた友人に声をかけてもらい、
今回一緒にその場所で作品をつくることになった。
結婚をして生まれ育った土地とは別の土地で生活をすること。
新しい家族の中に入ること。義父の土地を使わせてもらって作品をつくること。
それらは何かのことのはじまりのように思えた。
滞在中、家族と接するときも、
成途中のコンクリートの建築物が残るその土地に立ってみたときも、
心の中で何ができるのかを問いかけた。
展覧会の規模、発表する場所や関係性など様々な面で、
今回の制作は私の中にも新たな何かを見いだす機会になるように思える。
大学時代、制作して発表することに
はじめて向き合った時間を一緒に過ごした友人とのこの特別な時間を
丁寧に過ごし、関わっていきたい。
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